誰かに注意されたとき。
本当は自分にも非があると分かっているのに、「すみません」の一言が喉にひっかかることってありますよね。
ぼくたちはよく、「プライドを捨てろ」と言われます。
でも、本当は捨てるか守るかの二択ではなくて、「何のために、一度わきに置くのか」を決め直すほうがずっと現実的だと感じています。
この文章では、プライドを悪者にせずに、
「守る部分」と「そっとわきに置いてみてもいい部分」を分けながら、
今日からできる一回分の「意地をゆるめる練習」まで一緒にたどり着いていきます。
仕事の評価も、自分の誇りも、全部を手放す必要はありません。
ただ、ほんの少しだけ置き場所を変えるだけで、生きやすさが変わることがあります。
目次
プライドは本当に悪者なのか
「プライドが高いせいでうまくいかない」という言葉を何度も見ていると、
プライドそのものが悪いものに思えてくるかもしれません。
でも、そもそもプライドは、ぼくたちを守ってきた「盾」のようなものでもあります。
・これだけは譲りたくない、という価値観
・ここまで頑張ってきた自分への敬意
・やすやすと軽く扱われたくない、という境界線
こういう感覚がまったく無かったら、たぶんどこかで自分をすり減らしてしまいます。
昔の自分を思い出してみると、
「ここで踏ん張ったからこそ今の自分がいる」と言える場面が、一つくらいはあるはずです。
そのとき、静かに支えてくれていたのは、確かにプライドでした。
一方で、同じプライドでも、いつのまにか形を変えてしまうことがあります。
・「謝ったら負け」という思い込みになってしまう
・「弱みを見せたら舐められる」と、誰にも本音を話せなくなる
・「完璧でいたい」が強すぎて、挑戦する前からやめてしまう
このあたりに入ってくると、守りの盾というより、自分を閉じ込める壁に近くなります。
だから大事なのは、
「プライドを捨てる」か「守り切る」かではなくて、
・自分を守ってくれるプライド
・自分を縛ってしまうプライド
この二つを、少しずつ見分けていくことなのだと思います。
プライドが邪魔になる典型的な場面を言語化してみる
プライドに振り回されているかどうかは、頭の中だけではなかなか分かりません。
一番分かりやすいのは、「体が固くなる瞬間」を具体的な場面として思い出してみることです。
仕事編:謝れない・頼れない・任せられない瞬間
たとえば、仕事の場面。
・ミスを指摘されたときに、「でもあれは…」と条件反射で言い訳が出てくる
・本当は分からないのに、「分かりました」と返事をしてしまう
・本当は人に任せたほうがいいタスクを、「自分がやったほうが早い」と抱え込んでしまう
こういうとき、頭のどこかでは分かっています。
「ここで素直に聞いたほうが、長い目では楽になる」と。
それでも、喉の手前で言葉が止まる。
それはきっと、「仕事ができる自分でいたい」というプライドが、ぎゅっと前に出てきているからです。
人間関係編:素直に甘えられない・ごめんが言えない夜
身近な人との関係でも、似たようなことが起きます。
・約束を忘れてしまっていたのに、「そんな言い方しなくてもよくない?」と反射的に返してしまう
・心配してくれているのに、「大丈夫だから」としか言えない
・本当は甘えたいのに、「忙しいでしょ」と距離を取ってしまう
後から一人になったとき、
「あのとき素直に謝ればよかったな」「あれは言い過ぎだったな」と分かっている。
それでも、その瞬間はどうしても「負けたくない自分」が顔を出してしまう。
この「その場の勝ち負け」にプライドが引きずられているとき、
守りたいものと、守っているものがすれ違い始めます。
一人きりの時間編:後悔と自己嫌悪のループ
そして、一番苦しいのは、一人になった夜です。
ベッドの上で天井を見ながら、
今日の会話やメッセージを何度も頭の中で巻き戻して、
「あそこでもっと柔らかく言えたよな」と、自分の言葉に刺され続ける。
「どうしてあんな言い方をしたんだろう」
「どうしてあのとき素直にごめんと言えなかったんだろう」
ここで自分を責めすぎると、さらにプライドは固くなります。
「もう二度と同じ思いをしたくない」と、次からはもっと鎧を厚くしてしまうからです。
だからこそ、こういう夜にこそ、
「どんなプライドが顔を出していたのか」を、そっと言葉にしてみることが大事になってきます。
守るプライドと、わきに置いていいプライドの違い
ここからは、「プライドを種類分けする」作業をしてみます。
ざっくりでいいので、自分の中のプライドを三つの箱に分けてみてください。
- 守るプライド
- 一時的にわきに置くプライド
- 前提から見直してみたいプライド
目安になる質問を、いくつか並べてみます。
スクロールしながら、なんとなく自分に当てはめて読んでもらえたら嬉しいです。
1. 守るプライドのチェック
次のように感じるプライドは、むしろ大事にしてほしいものです。
・それを大事にすることで、「自分らしさ」が守られている感覚がある
・それを曲げてしまうと、長期的に自分を嫌いになりそうだと感じる
・お金や損得よりも、「これは譲らないほうが後悔しない」と思える
たとえば、
「嘘をついてまで評価されるのは違う」という感覚。
「誰かを傷つけてまで出世したくない」という感覚。
これは、手放す必要のないプライドです。
ここを削ってしまうと、芯そのものが弱くなってしまいます。
2. 一時的にわきに置くプライドのチェック
一方で、次のようなプライドは、「その場かぎりで少しゆるめる」のが役に立つことが多いです。
・その場で守ると、あとで自己嫌悪が残ることが分かっている
・本音では「謝ったほうがいい」「聞いたほうがいい」と分かっている
・守った結果よりも、「守った瞬間の気持ちよさ」が中心になっている
たとえば、上司やパートナーに対して、
「先に謝ったら負け」という感覚だけで意地を張ってしまうとき。
ここで一度だけプライドをわきに置いて、
「さっきは言い方きつかった、ごめん」と言うことは、
自分の価値を下げることではなく、「守りたい関係」を選び直す行為に近いです。
3. 前提から見直してみたいプライドのチェック
もう一つ、そもそもの前提から見直してもいいプライドもあります。
・「謝ったら舐められる」「弱みを見せたら終わり」というような極端なルール
・「仕事は完璧であるべき」「上に立つ人はミスをしてはいけない」という硬すぎる理想
・「自分だけは我慢すべき」という、一人で背負いこむ前提
これらは、昔の経験から生まれた「生き延びるためのルール」だったのかもしれません。
でも今の環境では、そのルールが自分を苦しめている可能性があります。
ここは、「一度全部手放す」必要はなくて、
「今の自分の年齢・環境に合う形にアップデートしてみる」という感覚で扱ってみると、少し楽になります。
「捨てる」「守り切る」だけじゃない、第三の選択肢
プライドについて考えるとき、多くの場合はこの二択になりがちです。
・全部捨てて楽になろう
・絶対に曲げずに突き通そう
でも、実際のところ、ぼくたちがとれる選択肢はもう一つあります。
「目的のために、一時的にわきに置く」
この第三の道をイメージしやすくするために、
ざっくりとこんなふうに比べてみます。
| 選び方 | その場の気持ちよさ | 長期的な信頼 | 自分の成長 | 心の疲れ方 |
|---|---|---|---|---|
| 常に守り切る | その場はスッとする | 相手が離れやすい | フィードバックが減る | 後悔と自己嫌悪がたまりやすい |
| すべて捨てる | 一時的に楽に感じる | 自分を軽く扱われやすい | 無理な我慢が増える | 消耗して自信を失いやすい |
| 一時的にわきに置く | 少し怖いが、あとで軽くなる | 関係や信頼が育ちやすい | 学べる機会が増える | 緊張はあるが、後悔は減りやすい |
「一時的にわきに置く」というのは、
プライドをゴミ箱に捨てることではなくて、
・いま守るべきものが「自分の面目」ではなく「関係や未来」だと判断したとき、一度だけ盾を下ろす
・場面が変わったら、また必要に応じて手元に戻していい
こういう柔らかい扱い方です。
「今日はこの場面でだけ、わきに置いてみる」
この単位で考えると、少しだけ現実味が増してきます。
今日からできる「プライドをわきに置く」小さな練習
ここまで読んでくれたあなたは、たぶんもう、
「自分のプライドを全部否定する必要はない」と分かっていると思います。
あとは、「じゃあ何をすればいいのか」を、一つだけ決める段階です。
1. 一日の中で「意地を張りがちな瞬間」を拾っておく
まずは、いきなり行動する前に、
自分がどんな場面で意地を張りやすいのかを、軽くメモしてみるのがおすすめです。
・上司や先輩に注意されたとき
・パートナーに心配されたとき
・家族に「大丈夫?」と聞かれたとき
・後輩や部下の前でミスしたとき
こういう場面を、一日の終わりに三つくらい書き出してみます。
ノートでも、スマホのメモでも、どこでもかまいません。
「意地を張りがちリスト」ができると、
次に同じ場面が来たときに、「あ、これだ」と気づけるようになります。
2. その場で使える、一呼吸のフレーズを決めておく
次に、その場で自分を少しだけ落ち着かせる「一言」を決めておきます。
たとえば、こんな感じです。
・「ここで一回だけ、勝ち負けの外に出てみよう」
・「この一言は、未来の自分へのプレゼントだと思って言ってみよう」
・「相手を勝たせるんじゃなくて、関係を勝たせる一言を選ぼう」
心の中でだけ唱えてもいいし、
誰にも聞こえない声でそっと口に出してみてもいいです。
この一呼吸のフレーズがあるだけで、
「条件反射で言い返す」前に、ほんの数秒だけ間が生まれます。
その数秒が、「わきに置く」かどうかを選び直す余白になります。
3. 実験は「一回・一行動」だけにする
最後に決めるのは、今日やる実験の内容です。
・「今日は、一回だけ『ごめん』を先に言う」
・「今日は、一回だけ『教えてもらってもいいですか』と言う」
・「今日は、一回だけ『大丈夫じゃないかも』と正直に言う」
大事なのは、「たった一回」に絞ること。
何度もやろうとすると、どうしても疲れてしまいます。
一回だけやってみて、
そのあとに「やってみてどうだったか」を静かに振り返る。
これを、日を変えながら何度か繰り返すだけで、
プライドの置き場所は少しずつ変わっていきます。
プライドにまつわる、よくある質問Q&A
Q. プライドをわきに置くと、相手に都合よく使われませんか?
たしかに、「譲ったほうがいい」と分かっていても、
「ここで折れたら、これからもずっと押し切られるのでは」と不安になりますよね。
ここで大事なのは、
・「何回も譲る」のではなく「今回は一回だけ」と自分で決めること
・「どこまで譲るか」の線を、事前に自分の中で引いておくこと
です。
一度プライドをわきに置いて謝ったり、頼ったりしたときに、
相手がそれを当たり前のように扱い続けるようなら、
それはプライドの問題というより、「距離を見直してもいい相手」です。
あなたのやさしさを、大事に扱ってくれる人も必ずいます。
その人たちの前でだけ、「わきに置く勇気」を使ってもいいのだと思います。
Q. 仕事でプライドを下げると、評価が落ちそうで怖いです。
「できません」「分かりません」と言うのは、たしかに勇気がいります。
でも、仕事の場ではむしろ、
・ミスをすぐ報告してくれる人
・分からないことを素直に確認してくれる人
のほうが、長期的には信頼されることが多いです。
「ここまで自分でやってみたのですが、ここから先が不安です」
「この部分の判断を、一度相談させてもらえますか」
こういうふうに、「丸投げ」ではなく「一緒に守ってほしいポイント」を添えて伝えると、
プライドを下げたというより、責任を分かち合っている印象に変わります。
Q. 家族や恋人の前で素直になるのが、どうしても恥ずかしいです。
長く一緒にいる相手ほど、「今さらキャラを変える」のは勇気がいりますよね。
いきなり面と向かって「ごめんね」と言うのが難しければ、
・翌朝に短いメッセージを送る
・テーブルの上に一行だけメモを残す
・「さっきはちょっと言い方きつかった」と、事実だけ伝える
こういう形から始めても十分です。
「恥ずかしい」という感覚は、
相手との関係を大事にしたい気持ちがあるからこそ生まれます。
その気持ちごと、大切に扱ってあげてほしいなと思います。
Q. 「全部自分が悪い」と思い込んでしまいそうで心配です。
プライドをわきに置いて謝ったり、譲ったりすると、
「じゃあ全部自分が悪かったんだ」と極端に考えてしまうことがあります。
でも、物事にはだいたい、
・自分の分
・相手の分
・誰のせいでもない分
の三つが混ざっています。
ノートの端やスマホのメモに、
その三つの枠を軽く書き出してみて、
思いついたことを一つずつ入れてみてください。
「ここはたしかに自分の分だったな」
「ここは相手にも理由があったな」
「これはタイミングの問題だったかもしれない」
こうやって分けていくと、
「全部自分が悪い」と抱え込まずにすみます。
Q. 過去にプライドを曲げて傷ついた経験があり、もう試すのが怖いです。
その経験があるなら、「また同じことになったらどうしよう」と慎重になるのは当然です。
まず、その怖さ自体を否定しなくて大丈夫です。
今回のテーマは、
「誰に対しても無条件にプライドを手放すこと」ではありません。
・信頼したいと思える人を、一人だけ選ぶ
・その人との関係の中で、「一回だけ」「この範囲だけ」プライドをわきに置いてみる
ここまで絞り込んでから始めてみてください。
読んで考えるだけでも、一歩です。
実際に行動に移すタイミングは、あなたのペースで大丈夫です。
Q. プライドが高いこと自体は、やっぱり悪いことなのでしょうか?
プライドが高い人には、
・自分の仕事や言葉に責任を持とうとする
・自分なりの美意識や基準を持っている
という良さも、たくさんあります。
問題になるのは、そのプライドが、
・自分を守るための基準として働いているか
・「傷つきたくない気持ち」を守る壁として働いているか
が曖昧になっているときです。
前半で書いたチェックを通しながら、
「これは守りたいな」と思えるプライドは、むしろ誇りにしていい部分です。
そのうえで、「もう少しだけ柔らかくしてもいいかな」と思える部分から、
そっと置き場所を変えていけたらいいのかなと思います。
まとめ|プライドの置き場所を決め直して、生きやすさを少しずつ変えていく
ここまで、いろいろな角度からプライドの話をしてきました。
振り返ってみると、
ぼくたちが向き合っているのは「プライドの有無」ではなく、
・どんなプライドが自分を守ってきたのか
・どんなプライドが今の自分を苦しめているのか
・どの場面で、一度わきに置いてみると関係や未来が守られるのか
この三つだったのだと思います。
プライドを敵に回す必要はありません。
むしろ、「ここは一緒に戦ってほしい」「ここは一回だけ休んでいてほしい」と、
味方として配置し直していくことが大事です。
そして、読後のあなたにお願いしたいことは、たった一つです。
今日、このあと一回だけでいいので、「意地を張りがちな場面」を一つ選んでみてください。
・その場面で、「ここは関係を守る一言を選んでみよう」と決めてみる
・そのための一言を、事前に心の中で用意しておく
これだけで十分です。
プライドをわきに置く勇気は、
「全部を手放す大きな決断」ではなくて、
「一日一回分の、小さな選び直し」の積み重ねです。
その一回を選んだ今日のあなたは、
もう少しだけ、自分と大事な人を同時に守れる場所へと歩き始めています。





