目次
マーケティングは観察から始まる
マーケティングの本を読んでも、SNSで事例を追いかけても、現場で使える実感がないまま疲れてしまうことがあります。
ぼくは、そういうときこそ知識より先に鍛えた方がいい土台があると思っています。
それが、観察です。
マーケティング力は、生まれつきのセンスだけで決まるものではありません。
日常の中で、人の行動や表情、選択の揺れをどれだけ丁寧に観察しているか。
その地味な積み重ねが、やがて企画やコピーや提案の精度を静かに底上げしてくれます。
この記事では、なぜ観察がそこまで重要なのかを、できるだけ現場寄りの感覚で整理していきます。
そのうえで、忙しい毎日の中でも無理なく続けられる観察の方法と、それを仕事の成果につなげていく流れを一緒に組み立てたいと思います。
スマホを眺めながらため息をつく夜から、街の風景や人の仕草が少しずつヒントに見えてくるところまで。
そこまでの道のりを、ゆっくり丁寧に言葉にしていきます。
知識より先に人を見ることがなぜ大事なのか
新しい本を一冊読み終えると、ひとつ賢くなったような感覚が生まれます。
ノウハウも事例も頭には入るので、たしかに学びは増えているはずです。
ただ、その状態で現場に戻ったとき、ふと違和感を覚える瞬間があります。
目の前の人の表情や、現実の売場の空気と、本の中のきれいな図解がうまく重ならないのです。
なぜかというと、本や記事の多くは、すでに誰かが観察しきった世界を整理してくれたものだからです。
読み手として眺めているだけだと、自分の目と頭を動かす前に、誰かの解釈が先に入ってきます。
観察は、その逆側に立つ行為です。
先に人を見て、先に生活を見て、自分の中に生の素材をためていく。
そのうえで、本や事例を見ると、書かれていることの意味や限界が、少し違って見えてきます。
ぼくはここに、マーケティングの伸びしろが眠っていると感じています。
知識を重ねる前に、世界の見え方そのものを少しだけ変えてしまう。
そうすると、同じ情報を読んでも、拾い上げられる粒度が変わっていきます。
観察と仮説と小さな実験という三つのステップ
観察と聞くと、ただぼんやり眺めるイメージが浮かぶかもしれません。
けれど、マーケティングに生かす観察には、ゆるやかな流れがあります。
ひとつ目が観察。
まずは人や場を丁寧に見る。
ふたつ目が仮説。
見えたことに対して、なぜそうなっているのかを静かに考えてみる。
三つ目が小さな実験。
その仮説を確かめるために、今ある仕事の中でできる範囲の試し方を選ぶ。
この三つが回り始めると、マーケティングの勉強が一気に立体的になります。
読んだことを、現場の観察と組み合わせながら検証できるようになるからです。
この記事は、この三つのステップをベースにしながら、日常の観察をどう積み重ねていくかを深掘りしていきます。
インプットばかり増えて苦しいとき、何が起きているのか
夜、ベッドの上でスマホを持ちながら、マーケティング系の投稿をスクロールしていく。
気づけば一時間以上、いろいろな人の知見や情熱に触れている。
それなのに、画面を閉じたあと、ふと虚しさが残ることがあります。
自分の明日の行動が、何も変わっていない気がするからです。
この感覚は、ぼくも何度も味わってきました。
そして、多くの場合、その裏側では同じことが起きています。
頭の中に入ってきているのは、誰かが整理してくれた正解や、洗練された事例ばかり。
そのせいで、目の前の現実のほうが急に素朴でつまらなく見えてしまうのです。
情報ばかり増えると、なぜ思考が鈍っていくのか
情報を取り入れること自体は悪いことではありません。
ただ、情報だけが増えていくと、頭の中に理想の世界の映像ばかりが積み上がっていきます。
そして、現実の売場や顧客と、それを無理やり重ねようとしてしまいます。
すると、目の前の人の小さな表情や、微妙な違和感を見逃しやすくなってしまうのです。
たとえば、本で読んだ理想の顧客像と、実際に買ってくれている人の姿が違うとき。
理想のイメージのほうを正しいものとして扱ってしまうと、現場の声を受け取る力が弱くなります。
思考が鈍っているのではなく、世界の見え方が偏ってしまっている。
ぼくはそう捉えています。
観察のない分析が、現場でずれてしまう典型的な流れ
数字や資料だけで考える時間が長くなると、頭の中で描いたストーリーに都合のいいように、データを解釈してしまうことがあります。
最初に結論を決めてしまい、その結論を支えそうな理由だけを集めて安心する。
その瞬間は筋が通っているように感じても、実際の生活の中に持ち込むと、どこか違和感が出てきます。
たとえば、アンケートで出てきた理由と、店頭での行動がまったく一致していないとか。
オンラインの数字では好調に見えるのに、実際に使っている人の表情が晴れていないとか。
このズレをそのまま放置してしまうと、施策を重ねるほどに、現場との距離が広がっていきます。
観察が入ると、このズレに早めに気づけるようになります。
人を見に行く。
生活を見に行く。
それだけで、分析の解像度は大きく変わっていきます。
自分の今の状態を一度整理する
もし今、情報ばかり増えて苦しさが強いなら、そこで自分を責める必要はありません。
むしろ、それだけ学びを積み重ねてきた証だと受け止めてほしいです。
ここからは、少しだけ方向を変えます。
これ以上、頭の中に新しい知識を足すのではなく、目の前の世界のほうに意識を向け直す。
その切り替えのきっかけとして、この記事の残りを使ってもらえたらうれしいです。
次の章から、何をどう見ればいいのかを一緒に整理していきます。
何をどう見ればいいかを決める|観察の三つの軸
観察が大事だと分かっていても、いざ街に出たり職場を眺めたりすると、どこに目を向ければいいのか分からなくなることがあります。
目に入ってくるものが多すぎて、どこから手をつけたらいいか迷ってしまうからです。
そこで、ぼくは観察するときの視点を三つに絞ることをおすすめしています。
場、行動、表情です。
この三つに意識を置くだけで、日常の風景の中から拾えるヒントの量が変わっていきます。
ひとつずつ、一緒に見ていきましょう。
軸一つ目 場を観察する
最初の軸は、場です。
人がどこで、どんな環境の中で選択しているか。
たとえば、同じ商品でも、コンビニのレジ前に置かれているときと、スーパーの棚の中に紛れているときとでは、手に取られる理由が変わります。
電車の中でスマホを触るときと、家のソファで触るときでも、選ぶアプリや過ごし方は違ってきます。
観察するときは、その場の空気ごと捉えるイメージを持つと、視点が安定します。
時間帯、混み具合、並んでいるものの種類、照明の明るさ、流れている音。
そういったものをセットで眺めてみるのです。
一度に全部を書き留める必要はありません。
心に引っかかった要素だけで大丈夫です。
大切なのは、選択がいつも空気の中で行われていることを、自分の感覚で思い出すことです。
軸二つ目 行動を観察する
二つ目の軸は、行動です。
人の手や視線がどこに向かっているか。
何に迷い、どこで決めているのか。
たとえば、コンビニの棚の前で立ち止まる人を見ていると、いくつかの共通パターンが見えてきます。
最初に一列だけさっと眺めて、そのまま手に取ってレジへ向かう人。
何度も同じ棚を行き来しながら、最後まで迷って別の棚の商品を持っていく人。
手に取ったものを一度かごに入れてから、やっぱり戻して違うものに替える人。
行動を観察するときは、正解を当てようとしなくて大丈夫です。
ただ、何が起きたかを描写することに集中する。
手が止まった。
視線が移動した。
戻した。
立ち去った。
この描写が積み重なるほど、後で仮説を立てやすくなります。
軸三つ目 言葉になっていない表情を観察する
三つ目の軸は、表情です。
特に、言葉の手前にある、微妙な揺れを捉えること。
レジに並ぶ人の顔は、意外と多くの情報を教えてくれます。
買い物かごを見つめながら、どこか申し訳なさそうにため息をついている人。
新商品を手にした瞬間、少しだけ目が輝いている人。
疲れた肩を落としながら、いつもの商品を無意識にかごへ入れる人。
これらはどれも、アンケートの数字だけでは浮かび上がってこないものです。
言葉にされないまま流れていく感情の小さな波を、少しだけ受け取ってみる。
もちろん、じっと見つめすぎる必要はありません。
あくまで自然な距離感の中で、自分の中に静かに記録していきます。
観察の癖を確かめるチェック表
ここで、一度自分の観察の癖を整理してみましょう。
次の項目を、心の中でゆるく振り返ってみてください。
- 商品そのものよりも、使っている人の様子に目が行くことが、ここ一週間でどれくらいあったか
- 電車や飲食店で、人の手元や視線を観察した記憶がどれくらいあるか
- ネットのレビューを見るとき、評価の数値よりも、具体的なエピソードに目が止まるかどうか
- 仕事で出した提案や企画の中に、自分が見た場面や行動の記憶がどれくらい混ざっているか
- 観察したことを、三行だけでも書き留めた日が最近あったかどうか
- 自分の予想が外れたとき、その理由を観察し直した経験があるかどうか
ここで数を数える必要はありません。
なんとなく、どの項目ならすぐに思い出せて、どれがまったく思い出せないか。
それだけでも、これからどこを意識していけば良いかが見えてきます。
日常動線に組み込む観察習慣|時間を増やさず視点を変える
観察が大事だと分かっても、仕事や家事に追われていると、まとまった時間を確保するのは難しく感じます。
そこで意識したいのは、新しい時間をひねり出すのではなく、すでにある時間の中で視点を変えることです。
通勤、買い物、休憩。
一日の中に、少しだけ心が空白になる瞬間があります。
そのタイミングを、観察モードに切り替えるだけでも、集まる素材の量は変わっていきます。
通勤中の数分を観察に使う
朝の電車の中。
ついスマホでニュースを流し読みしてしまう時間を、時々だけでも変えてみます。
車内を見回して、何人がスマホを持っているか。
そのうち、動画を見ていそうな人がどれくらいいるか。
通知が鳴ったときに、すぐ確認する人と、気づかないふりをする人の違い。
一度に全部を把握しようとせず、今日はスマホの持ち方だけ見てみる、明日はイヤホンの有無だけ見てみる、といった具合にテーマを決めてもかまいません。
観察のポイントは、特別な場所へ行くことではなく、今すでに過ごしている場面を別の角度で見直すことです。
買い物のたびに棚と人の距離を眺める
コンビニやスーパーに立ち寄るときも、観察のチャンスが隠れています。
自分が商品を選ぶ前に、少しだけ周りの人の動きを眺めてみる。
どの棚の前で人が立ち止まりやすいか。
どの商品が手前に引き出されていて、どれが奥に押し込まれているか。
レジに並ぶ列の長さと、スタッフの動き。
その場の空気を一枚の写真のように切り取って、頭の中に保存しておきます。
慣れてくると、自分自身が商品を選ぶ瞬間にも、少し客観的な視点を向けられるようになっていきます。
ああ、今の自分は、疲れているからいつものものを選んだのだな、と気づけるようになるのです。
待ち時間を、人の変化を追う時間にする
カフェで飲み物を待っている時間。
エレベーターが来るのを待っている時間。
会議が始まる前の静かな数分。
こういった隙間の時間は、観察にぴったりです。
周りの人が、退屈な時間をどう扱っているかを眺めてみます。
すぐにスマホを取り出す人。
ぼんやり天井を見ている人。
資料を見直している人。
その選択の違いには、それぞれの不安や癖がにじんでいます。
ぼんやりと眺めるだけでも、少しずつ人の行動のパターンが頭の中に蓄積されていきます。
観察内容を三十秒で残すメモの型
観察したことは、その場では鮮明でも、数日経つと輪郭がぼやけていきます。
そこで、おすすめなのが三十秒メモです。
スマホのメモ帳でも、紙のノートでも大丈夫です。
一つの観察につき、次の三つだけを書き残します。
- いつ、どこで
- 誰が、何をしていたか
- そのとき、自分が感じたこと
たとえば、
夕方のコンビニで、仕事帰りらしき人が疲れた表情で甘い飲み物を手に取っていた。
その姿を見て、ぼくは安堵と罪悪感が混ざったような空気を感じた。
この程度で十分です。
細かく分析しようとすると続かなくなるので、描写と感情だけを残しておくイメージで大丈夫です。
小さな観察を施策につなげる流れ
ここまでで集めてきた観察を、どうやって仕事の成果につなげていくか。
ここがつながらないと、ただの趣味で終わってしまいます。
とはいえ、いきなり大きな企画に結びつけようとすると、プレッシャーが強くなりすぎます。
そこで意識したいのは、小さな実験に落とし込むことです。
観察メモからなぜを三回だけ掘ってみる
三十秒メモを見返す時間を、週に一度だけでも作ってみます。
そのとき、一つのメモに対して、なぜを三回だけ重ねてみてください。
なぜこの人は、その商品を選んだのか。
なぜその場面が、自分の心に強く残ったのか。
なぜ自分は、その感情に反応したのか。
ここで出てくる答えは、正解である必要はありません。
大事なのは、観察した出来事の裏側に、どんな背景がありそうかを想像してみることです。
この作業を繰り返していくと、自分の中に仮説のストックがたまっていきます。
仮説を小さな実験にする
仮説は、頭の中に置いておくだけでは育ちません。
必ず、何らかの形で試す場が必要になります。
ここで意識したいのは、いきなり業務全体を変えようとしないことです。
まずは、自分の裁量の中で変えられる範囲だけを選びます。
伝え方を一文だけ変えてみる。
売場の並べ方を一箇所だけ変えてみる。
打ち合わせのときに、観察メモを一つだけ共有してみる。
結果がどうであれ、その変化と反応をまた観察します。
うまくいっても、いかなくても、次の仮説の素材になります。
観察と実験をぐるぐる回す
観察して、仮説を立てて、小さく試す。
その結果をまた観察して、次に活かす。
この流れが回り始めると、毎日の仕事の中に、静かな楽しさが増えていきます。
自分の視点が、少しずつ現実に影響を与えている感覚が生まれるからです。
マーケティング力は、このループの回数と質によって育っていきます。
派手な成果が出る前から、その土台は静かに太くなっていきます。
内向きでもできる静かな観察スタイル
人と話すのが得意ではなかったり、大勢の前で発言するのが苦手だったりすると、自分には観察を生かしたマーケティングは向いていないのではないかと不安になることがあります。
でも、観察は必ずしも会話とセットである必要はありません。
むしろ、静かに世界を見つめることが好きな人のほうが、向いている場面もたくさんあります。
会話が少なくてもできる観察
たとえば、オンライン上のレビューや投稿をじっくり読むことも、立派な観察です。
そこに書かれている言葉の裏に、どんな生活や感情があるのかを想像してみる。
また、過去のやりとりの履歴を読み返しながら、人がどのタイミングで安心しているか、不安になっているかを追ってみるのも、静かな観察になります。
話すことが苦手でも、読み取る力が高い人は多いです。
その力を、意識的に観察という形で扱ってみると、自分の強みが見えやすくなります。
思い込みに引っ張られすぎないための三つの問い
観察をしていると、どうしても自分の経験や価値観に引っ張られてしまうことがあります。
そこで、少しだけ自分を外側に置くための問いを、三つだけ持っておくと役に立ちます。
本当にそうだろうか。
他の人なら、どう感じるだろうか。
この場面を、別の角度から見たらどう見えるだろうか。
この三つを、観察メモを読み返すときにそっと添えてみる。
それだけでも、世界の見え方が少しずつ柔らかくなっていきます。
観察方法を比べて、自分に合うスタイルを選ぶ
観察と一口に言っても、やり方はいくつかに分かれます。
ここでは大きく三つに分けて、特徴を整理してみます。
ひとつ目は、現場に足を運んで人や場を見る方法。
ふたつ目は、オンライン上の行動や言葉を追いかける方法。
三つ目は、会話の中で相手の反応を味わう方法です。
それぞれに向き不向きや、得られるものの違いがあります。
ざっくり比較すると、次のようなイメージになります。
| 観察の方法 | 時間の取りやすさ | 気づきの深さ | 一人で完結しやすいか | 心理的な負荷 |
|---|---|---|---|---|
| 現場での観察 | やや低め | 高い | 場合による | やや高め |
| オンラインでの観察 | 高い | 中程度 | 高い | 低め |
| 会話の中での観察 | 中程度 | 高い | 低め | 高め |
現場での観察は、場の空気ごと感じ取れるぶん、得られるものは大きいです。
ただ、移動や時間の制約があるので、毎日続けるのは難しいこともあります。
オンラインでの観察は、隙間時間に繰り返し取り組めるのが強みです。
一人で完結できるので、静かに情報を集めたいときに向いています。
会話の中での観察は、その場で相手の反応を確かめられる分、深い気づきが得やすいです。
一方で、慣れていないと心理的な負荷も大きくなりがちです。
最終的に選ぶ基準
どれが正解ということはありません。
大事なのは、自分が続けやすいものを、まず一つだけ決めることです。
基準としては、次の三つを意識してみてください。
- 今の生活の中で無理なく差し込めるかどうか
- やっていて、少しでもおもしろさや興味が湧くかどうか
- 一人で始められるか、誰かの協力が必要か
もし迷ったら、まずはオンラインでの観察から始めてみるのも良い選択です。
レビューや投稿を追いかけながら、自分なりのメモをためていく。
そこから、現場や会話に広げていくイメージを持つと、負荷を抑えながらステップを踏めます。
よくある不安と、その扱い方
観察を意識し始めると、いくつかの不安が浮かんできます。
ここでは、よく聞くものをあらかじめ扱っておきます。
Q. 観察しているだけで、何も行動しないまま終わりそうで怖いです
その不安は、とても健全な感覚だと思います。
世界を眺めているだけで満足してしまう自分を、どこかで心配しているのですよね。
そこで意識したいのは、観察のたびに行動するのではなく、行動の前に観察を一度通すという順番です。
毎回行動に結びつける必要はありません。
一週間のうち、一つだけで大丈夫です。
観察メモの中から、一番心に残っているものを選んで、そこから小さな変化を考えてみる。
そのくらいのペースから始めると、負担なく続けやすくなります。
Q. ビジネスと関係なさそうな場面を観察しても意味がありますか
意味はあります。
むしろ、仕事とは一見関係なさそうな場面ほど、素の感情が現れやすいです。
たとえば、家族連れの買い物や、友人同士の会話、休日の公園など。
そこには、役職や肩書きが外れた状態の行動が詰まっています。
ビジネスの場面だけを見ていると、どうしても言葉が固くなります。
日常の観察が増えるほど、柔らかく届く表現のヒントが増えていきます。
Q. 他人をじっと見るのは失礼な気がして、あまり観察できません
その感覚も、とても大切なものです。
観察は、相手を品定めする時間ではありません。
距離感が気になるときは、直接の視線ではなく、動きや場の空気に意識を向けてみてください。
足取りの速さや、ものの持ち方、場に流れている空気。
相手を見下ろすためではなく、大事に扱うために観察する。
その意識がある限り、あなたの観察は、人を傷つけるものにはなりません。
Q. 観察メモをチームで共有するとき、主観的な気づきも書いていいですか
主観は、むしろ大事な素材です。
ただし、そのまま結論として扱うのではなく、「自分はこう感じた」という形で出すのがおすすめです。
たとえば、
この場面を見て、自分は違和感を覚えた
この行動に、自分は安心を感じた
というように、自分の感覚を切り分けて言葉にしておく。
そのうえで、他の人の観察や意見と並べてみると、チーム全体の視点が広がっていきます。
Q. すでに数字を扱う仕事をしていても、観察から始めた方がいいでしょうか
数字を扱う仕事をしているからこそ、観察が生きてきます。
画面の向こう側にいる人の姿が見えるほど、数字の意味合いが変わってくるからです。
もちろん、仕事の優先順位によっては、すべてを観察から始めるのが難しい場面もあるはずです。
その場合は、一つの案件だけでも観察を挟んでみる。
その体験が一度あるだけで、数字を見るときの視点が少しずつ変わっていきます。
Q. 観察しても、何も気づきが出てこない日が続いたときは
何も気づきが出てこない日があっても大丈夫です。
むしろ、その日は世界と自分との距離が近すぎて、言葉にする余裕がなかっただけかもしれません。
そんなときは、無理に意味づけをしようとせず、ただ場の空気を味わう日にしてしまうのも一つです。
後からふっと、あの日の風景が思い出されることもあります。
観察は、毎回収穫を求めると苦しくなります。
畑を耕すように、淡々と土を触っている時間も含めて、大きな流れだと捉えておいてほしいです。
まとめ|観察する自分にゆっくり変わっていく
ここまで読んでくれているあなたは、すでに世界の見え方が少しだけ変わり始めているかもしれません。
マーケティング力を上げたいと思ったとき、多くの人は新しい知識やテクニックを探しに行きます。
それも大切ですが、その前に土台として育てておきたいのが観察です。
場を観る。
行動を観る。
表情を観る。
この三つを日常の中に少しずつ取り戻していくと、同じ本を読んでも、同じ数字を見ても、感じ取れるものが変わってきます。
観察して、仮説を立てて、小さく試す。
その結果をまた観察する。
このループをぐるぐる回し始めたとき、マーケティングは急に実感を伴ったものになります。
もし、今のあなたが、情報の波に疲れているなら。
今日から、一つだけでかまいません。
すでに過ごしている時間のどこかを、観察の時間としてそっと名前をつけてみてください。
通勤の五分でも、コンビニのレジ前でも、カフェの待ち時間でも。
その場所で、人と場を静かに見つめて、自分の心の動きを三行だけメモに残す。
それを一週間続けてみた頃には、世界の中に少しだけ新しい線が浮かび上がっているはずです。
その線こそが、あなたのマーケティング力の土台になっていきます。
焦らなくて大丈夫です。
観察は、一度始めれば、一生かけて深めていける営みです。
静かな歩幅で、自分のペースで、世界との対話を重ねていきましょう。





